「三菱ショック」後のメガバンクの現実解
日経コンピュータの特集に「三菱ショック後のメガバンクの現実解」が取り上げられましたので、紹介します。
大きな荷物を整理せよ
ITコストにかかる守りの費用
- 年間で1000億規模のITコスト
- 7~8割が巨大勘定系システムの運用保守にかかる
進めたいFintech
- 守りのITコストに圧迫され、十分な投資ができない
- まずは運用保守の手間とコストを減らして攻めの資金を捻出
2段階移行の現実路線
-メインフレームを一気にクラウド環境へ移行するのは不可能 - 1段階目:オンプレ環境で既存アプリケーションをマイクロサービス化 - 2段階目:マイクロサービス化したアプリケーションをクラウドへ順次移行
三菱UFJフィナンシャルグループが下したAWS宣言
2017年1月 パブリッククラウドを採用する方針を発表
計画の遅れ
- 2017年~2027年までに国内にある1000システムのうち、500システムをクラウドへ移行する計画
- 2020年時点で250システムがクラウドで移行している予定
- 実績は100弱のシステムがクラウド移行完了
セキュリティ上の課題が原因
- 顧客データなどの重要なデータのセキュリティをどう担保するかの検討
対策
- 従業員のクラウド利用状況の確認を利便性高く
- CASB(キャスビー)を導入し、不審な通信の検知体制の構築
メインフレームの優位性
処理性能や堅牢性
- 3400万人の顧客基盤で求められる性能
- 繁忙期にはATMのトランザクションだけでも1秒間に1000件程度発生する
サポート体制
- パートナー企業がハードウェア、OS、ミドルウェアを一体で提供
- サポートも手厚い
来るべき日はいつか
はじまった「アーキテクチャ戦略」
2段階のクラウド移行
- マイクロサービス化
- クラウドへの移行
マイクロサービス化
- システムをより細かく分割
- システムごとの共通処理を切り出す
- SOA(サービス指向アーキテクチャ)の深耕
※各システムの認証、帳票出力の機能を切り出し、1つの機能にまとめなおす - システムを軽量化し、変更時の時間とコストがかからないようにする
オープンAPIへの対応
- 2020年4月 公正取引委員会がオープンAPIを進めるように促す
- 銀行側が不当に接続を拒否すれば、独占禁止法違反の恐れ
- Fintech企業が欲しがるのは細かい機能のAPI
- APIの利便性もこれからの競争力の1つになりえる
- どんなリクエストにも対応する姿勢
クラウドへの移行
- 3~5年後にメインフレーム上で稼働するアプリケーションの2割をオープン基盤に移行する計画
- ポイントプログラム(振込手数料の無料条件算出機能)などが先行で移行
- 時代の流れに応じて柔軟な変更が必要なシステムが優先度が高くなる
人材育成のチャンス
2008年の失敗
- 旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステム統合プロジェクト
- 総費用3300億円、開発工数14万人月
- パートナー企業の役割はものづくり
- プロパーの役割はプロジェクトマネジメント、品質チェック、セキュリティレビュー
教訓
- 要件定義~基本設計だけではなく、詳細設計、コーディングも内製化へ
- 開発言語のメリットや限界を肌感覚で理解する
- 今後のシステム変更対応時のスピード感への期待
足元を着実に
- AI、RPA、ブロックチェーンなどの新技術が台頭
- 新技術の適用に目が奪われがち
- 勘定系システムといったレガシーを競争力へ結びつける
- 銀行のDXの進化へ