日本郵便の成功モデルとは
日経コンピュータのケーススタディに「日本郵便」が取り上げられましたので、紹介します。
概要
- 2万4000局を支えるITインフラを刷新
- 日本郵便が抱えている体質改善による改革によるコスト80%削減
改革者
- 鈴木義伯CIO
- NTTデータ → 2006年東京証券取引所CIO → 2017年日本郵便CIO
- 東京証券取引所ではシステム障害の原因であった老朽化をシステム刷新で脱却
- 日本郵便では丸投げ体質の脱却に着手、ITインフラの調達プロセス改革を断行
日本郵便の2つのシステム
局システム
- 郵便局の店頭業務用システム
- 郵便だけでなく、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の業務でも使用
- システムが老朽化
- 2018年~2020年1月にコスト削減と性能・品質の向上を目指すシステム刷新
- 80%のコスト削減を実現(170億円 → 35億円)
- システム更改後に大きなトラブルなし
事業システム
- 郵便事業の荷物追跡システム
- 2023年にシステム刷新予定
- 局システムでの成功モデルを適用し、さらなる成功を目指す
局システムでの成功モデル
ハードウェア保守費用の見直し
サービスレベルの切り下げ
- 従来:24時間対応の保守契
- 刷新後:24時間の保守契約を打ち切り
第三者保守の導入
教育体制の構築
- 上記の過剰サービス契約でハードウェアメーカーへの丸投げをやめ、日本郵便側で最低限の故障対応手順の教育制度を構築
適用範囲の拡大
- 50台の物理サーバーを最新鋭20台に集約
- データセンターも集約
競争入札の分割
- 従来
- 1社に集約
- ハードウェア調達~すべての保守業務を委託
→ 富士通
- 刷新後
発注分割による問題
- 課題
- ハードウェアと基盤構築のベンダーが異なる
- 日本HPE製のハードウェアを富士通が構築することになる
- 解決方法
- サーバーやOSの設定項目を従来の4分の1程度に削減
サーバー以外の機器コスト削減
- ネットワーク
- データベース
パソコン13万台の更改
課題
- 2万4000の郵便局に散らばる13万台のパソコンの更改
従来の方針
- 業者に丸投げし、すべて外注する
今回の方針
- エンドユーザー(各郵便局)で実施する
- ゆうパックで新しいパソコンを送付、局員が自分で設置、初期設定を行う
配備体制の強化
- 2万4000すべてが協力的ではない
→協力的な局長を配備リーダに選出し、推進体制の強化 - 不慣れな高齢局員も多い
→自発的な協力者(簡易局支援者)を460人集め、更改を支援
事業システム刷新に向けて蒔いた種
5万台のOSアップグレード
- 13万台のうち、新規購入は8万台のみに抑えた
- 5万台は内務パソコンとして使用
- 各郵便局から回収した中古PCをリフレッシュし、OSのみをアップグレード
再利用工場の開設
- 埼玉県内の遊休拠点に再利用工場を開設
- 各郵便局からの中古PCを受け取り、データ消去、OSアップグレード、返送
コスト削減効果は少ない
- 局システム刷新:80%(180億円 → 35億円)
- PC更改:6%程度(580億円 → 540億円)
狙いはコスト削減以外へ
- 2023年に控える事業システム刷新へ向けた協力体制の強化
- 2023年以降にどのぐらいの成果が表れるのかが今後の課題